トヨタ自動車の大量リコール(回収・無償修理)騒動で豊田章男社長の責任論をめぐって暗闘が繰り広げられた。  国土交通省はリコールが即、経営者の進退に直結するようではリコール隠しを助長しかねないとして、豊田社長の責任追及には後ろ向き。トヨタも「リコール隠しではない」(幹部)として、責任論を強く否定し、米国での修理作業を一刻も早く終えることで早期収拾を目指す構えを強調していた。  その間、トヨタの株価は一カ月足らずで最大二五%も急落。トヨタ株に表立って売り推奨を出した大手証券はなかったが、風説乱れ飛ぶ株式市場では、世界戦略車「ヴィッツ」のリコール説に加え、豊田社長が降格し、張富士夫会長が社長を兼務するとの噂まで流れた。  これを受けてマスコミ各社が遠回しに社長の進退を探り始めたところ、火消しに動いたのが一部の大手銀行。“新聞辞令”で社長更迭の流れが生まれるのを警戒したトヨタの差し金か、トヨタに恩を売りたい銀行側の商魂なのか、動機は定かではないが、膨大な出稿量のトヨタの広告を“人質”に取られているマスコミ各社の腰が引けたのは間違いなさそうだ。

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