「アフリカ業界」の枠を越えて

執筆者:白戸圭一2010年9月1日

 平野さんとともに本欄を担当する白戸圭一です。ウェブ版フォーサイトの発足に伴い、ごあいさつ申し上げます。

  アフリカは長い間、日本人にとって様々な意味で遠い地域でした。誤解を恐れずに言えば、日本の社会の中で、アフリカに関心を持つ人は限られていました。アフリカに関する本はあまり売れず、買う人はいつも同じ顔ぶれで、しかも同じ業界の顔見知り(例えば研究者仲間、市民運動仲間)ばかり・・・・。

  そういう状況が続くと、私を含むアフリカについての情報発信者(研究者、ジャーナリスト、市民運動関係者など)の側には「甘え」が出かねません。少数の「アフリカ業界関係者」を想定した内輪向けの本、論文、記事、ニュースレターなどを書いていれば、とりあえずは「専門家」の体面を取り繕える可能性があるからです。

  しかし、状況は劇的に変わりました。「アフリカ業界」の枠を越えた大勢の人が、アフリカに関心を抱き始めています。アフリカは援助対象地ではなく、資源供給地、投資対象地として世界経済への統合度を強めています。その結果、アフリカそのものに関心があるからアフリカを知ろうとするのではなく、仕事や学問の上での必要に迫られてアフリカを知ろうとする人が急増しています。アフリカの「専門家」も、アジア諸国、中国、米国、欧州各国などを研究してきた人々と同じように、常に日本の各界各層へ向けた情報発信を心がけ、どのような方面からの批判も覚悟で筆を執らなければならなくなりました。私のような浅学非才には荷が重い役目ですが、せめて志だけは高く掲げたいと思います。ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

(白戸圭一)

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