アフリカでエリート主義について考える

執筆者:平野克己2010年9月17日

 民主党の代表選挙が終わって、きっと多くの人は思うところがあるだろう。私は、永きにわたってみてきたアフリカ政治のことを考えている。とくに、1993年からの2年間、南アフリカの大学にいて実見した国家再建について思い起こしている。

 南アフリカの民主化は世界史に残る大事業だった。のちの大統領マンデラは1990年に釈放され、現与党であるアフリカ民族会議(ANC)も合法化された。そして、白人右翼政党を含めた20を超える政治団体が参加して、アパルトヘイト後の国家体制をどうするかという話合いが始まったのである。

 しかしこれはとんでもない難事業だった。ANCは武力闘争を放棄したが、ANCと同時に合法化されたパンアフリカニスト会議(PAC)は武器を捨てなかった。そもそも、アフリカ民族主義者と白人右翼とのあいだに合意の余地は見いだし難かった。アパルトヘイト時代の南アフリカには黒人傀儡国家「ホームランド」があったが、ホームランド政府を牛耳る黒人勢力は生き残りをかけてANCに抵抗した。民主化交渉とは名ばかりで、各団体の主張の応酬が続いたのである。

 この最中にも黒人居住区での襲撃事件が頻発し、毎年2万人が犠牲になっていた。ANC内の過激派はマンデラ執行部への批判を強めていた。当時の与党であった国民党は、さまざまな勢力が入り乱れるような政局を故意に作りだしてANCのプレゼンスを相対化し、そのなかでアパルトヘイト後も権力を維持する可能性を探ろうとしているようにみえた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。