もう1つのカストロ発言

執筆者:遅野井茂雄2010年9月20日

 4年間の沈黙を破り「キューバ・モデルはもううまくいかない」としたフィデル・カストロ前議長の発言が驚きを与え、その真意をめぐる憶測が世界を駆け巡ったことは先に記した通りである。その後、本人が、弟のラウル政権の経済改革を支持したものではなく、「アメリカの資本主義モデルもうまくいかない」という趣旨で、「ゴルドバーグ記者は誤った解釈をしている」と、自ら修正したことでこの件には終止符が打たれたようだ。

 しかし、キューバ政府は13日、公務員50万人を半年で削減すると発表、結果として記事にあるように改革の地ならしをするための発言だったと考えられなくもない。ただ政府は、靴磨きや修理など100を超す職種を想定しているようだが、社会主義体制から放り出され路頭に迷った人々がこうした職種でどう自活できるのか。モデルの大幅改編なしで民間部門での雇用吸収はありえず、改革の行方はいぜん不透明である。

 他方、米州問題評議会(COHA)は、もう一つのカストロ発言に注目しており興味深い。「キューバ・モデル」発言に目を奪われるべきではなく、ゴルドバーグ記者に語った中東問題をめぐる発言に込められたカストロの西側に対するメッセージを推し量るべきだというのである。「カストロの変心:キューバ、ベネズエラ、アメリカへの意味」と題する論文がそれだ(www.coha.org)。

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