中国のリスク回避に台湾を活用できるか

執筆者:野嶋剛2010年10月19日

台湾の対中窓口トップである江丙坤氏が来日し、きのう、都内でECFA後の中台関係について講演しました。江氏は、私が台北支局の在任中に何度もインタビューした人物で、日本語も堪能なベテラン政治家です。ECFAは中台間で6月に署名され、9月に発効した自由貿易協定で、関税をゼロに引き下げ、投資や金融などでも自由化を進めるものです。

2008年の馬英九政権の登場後、中台関係の改善によって台湾は中国経済から多大な利益を享受し、経済パフォーマンスは上向きになりつつあります。今後もECFAによって台湾経済の中国進出、中国との一体化が加速するでしょう。

こうした状況を踏まえ、江氏の講演は「日本企業は台湾企業と組んで中国進出しましょう」というセールストークでした。

中国進出には労務や契約でリスクが高い。言葉の壁もある。当分円高が続きそうだ。ならば、中国とは言語・文化で共通で、中国人と付き合いも長く、中国をよく知っている台湾にやっかいな部分を任せ、日本は資本や技術を提供し、日台連合で中国ビジネスをしませんか--というものです。

もともと日台連合方式ではモスバーガーやセブンイレブン、上島珈琲などですでに成功例がありますが、今後は製造業などにも広げていきたい、という台湾側の意気込みです。これは、台湾にとって対中傾斜が強くなりすぎないよう日本との関係も維持していく外交バランス的にも役立つ話でもあり、ここ半年、台湾側から日本への働きかけが行われています。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。