このところ、経済産業省大臣官房付の古賀茂明氏をメディアでよく見かける。
今月15日の参議院予算委員会で、野党から参考人として呼ばれ、民主党政権の公務員制度改革について「現役出向なら天下りではないというのは不思議なロジック」などと答弁。
これに対し、仙谷官房長官が「こういうやり方は彼の将来を傷つける」と発言し、事実上の恫喝発言だと問題になったのだ。
 
恫喝云々はともかく、古賀氏の発言内容は、私から見るともっともだ。
菅内閣の閣僚たちは、「現役出向は天下りとは全く違って、良いことだ」と答弁している(例えば12日の衆議院予算委員会での前原外務大臣答弁など)が、現役出向と天下りはどう違うのか?
 
1、そもそも、役所を退職してから独立行政法人や公益法人などの理事に就任する「天下り」と、役所からの出向という形で理事に就任する「現役出向」は、形式だけの違いで、ほとんど区別はつかない。おそらく、各法人の内部にいるプロパー職員にも、区別のついていない人が多いのではないかと思うぐらいだ。
 
2、前原大臣らが強調するのは「天下りなら退職金を2回もらうが、現役出向では1回しかもらわない」という点だ。
しかし、30年役所にいて、その後5年間独立行政法人にいるというケースで考えれば、
・「天下り」なら、「30年分の退職金」をまずもらって、その後また「5年分の退職金」をもらうのに対し、
・「現役出向」なら、「35年分の退職金」を通算してもらうだけの話。
抜本的に退職金が減るような話ではない。
 
3、かつての民主党は、「天下りのムダは12兆円」とよく言っていた。「天下りがいるために、天下り法人と役所との癒着が生じ、天下りOBの人件費にとどまらず、無用な補助金をつけるなどのムダが生じている」という理屈。金額がどこまで正確は別として、理のある主張だったと思う。
この「12兆円」の話は、どこに行ったのだろうか? 「天下り」を「現役出向」に換えてみても、12兆円は全く減らないはずだ。
 
恫喝云々は別として、国会できちんとした討議をしてもらいたいと思う。
 
(原 英史)

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