過剰流動性が引き起こす「銀相場バブル」

執筆者:鷲尾香一2010年11月8日
追加金融緩和策を決めたFRBのバーナンキ議長(C)AFP=時事
追加金融緩和策を決めたFRBのバーナンキ議長(C)AFP=時事

 米国が実施している金融緩和による巨額の資金供給が“過剰流動性”となり、様々な市場に影響しバブルを引き起こし始めている。  米連邦準備制度理事会(FRB)は11月3日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、2011年6月末までに6000億ドル(約49兆円)の米長期国債を買い入れ、市場に資金を供給する追加金融緩和策を発表した。  FRBは今年8月、保有する住宅ローン担保証券(MBS)などの元本償還金を米長期国債の購入に充てる金融緩和措置を実施していた。今回の6000億ドルと合わせると、11年6月末までの長期国債買い入れ規模は総額9500億ドル(約77兆円)に達すると見られている。  オバマ米大統領は景気対策として輸出の倍増を公約に掲げている。金融緩和による巨額の資金供給は、通貨供給量の増加→金利の低下→ドル安→輸出競争力の向上という図式で効果をもたらすはずだった。確かに、米国内では製造業に回復の兆しが見え、小売売上高は急回復している。しかし、肝心の失業率は10%の大台に肉薄する水準で高止まりしたままだ。  問題は金融緩和による巨額の資金供給が、通貨供給量の増加→資金調達レートの低下→リスク資産への投資の活発化という経過を辿り、“過剰流動性バブル”を形成し始めていることにある。  FRBが追加金融緩和策を決定した翌日の11月4日、米ニューヨーク市場ではダウ工業株30種平均が1万1434ドルまで上昇、リーマン・ショック前の水準を回復した。インドの代表的な株価指数SENSEXは2万0893と過去最高値を2年10カ月ぶりに更新し、英ロンドンのFTSE100種総合株価指数は5862と2年5カ月ぶりの高値を付けた。円高とデフレに苦しめられる日本を除き、新興国も含めた多くの国の株式市場が上昇している。  それだけではない。11月4日には米ニューヨーク商品取引所で金先物が1トロイオンス=1392.9ドルまで上昇し、最高値を更新。同じく、米ニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油先物が1バレル=86.83ドルと約半年ぶりの高値を付けた。

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