「総辞職か解散か」という末期症状

執筆者:青柳尚志2010年11月22日
行き詰まる菅政権(c)時事
行き詰まる菅政権(c)時事

 政権の末期症状とはこのことだろう。外交の錐揉み、次々と漏れ出す機密、閣僚の相次ぐ失言と失態。菅政権は底割れ状態に陥った。このままでは2011年度の予算関連法案の成立も覚束ず、総辞職も視野に入ってきた。泥沼の党内抗争の末に分裂となるか、政界再編成となるか、はたまた自民・民主の大連立になるか。政局の視界がゼロになるなか、経済の重要案件はすべてストップする。 「国会答弁はふたつ覚えておけばよい」と法相がいえば、「自衛隊は暴力装置」と官房長官がいう。失言のオンパレードに菅政権は立ち往生している。これらの発言は、単に口が滑ったという以上に、深刻な影響を民主党に及ぼす。法相発言は支持者の前で「ここでは国会答弁のようないい加減なことは言わない」といった往時の自民党政権の建設相と同じだ。

「失言」の裏にあるもの

 民意からの離反。その故をもって自民党は政権の座から引きずり下ろされた。オストラシズム(陶片追放)を煽った民主党の閣僚が、国会軽視の発言をすることは文字通り命取りとなる。そればかりではない。尖閣沖衝突事件で公務執行妨害罪により逮捕勾留された中国人船長の釈放を巡る不透明な決定について、はぐらかしの答弁を重ねた法相が、よりによって不誠実だったと認めるとは。街ゆく人の憤りに火を点けたのは間違いあるまい。
 尖閣沖事件の証拠ビデオ流出事件では、流出元とされる海上保安官の取り調べが暗礁に乗り上げた。ビデオ流出を一種のクーデターと評し、「保安官を英雄扱いするな」といった賢しらな議論がある。こうした議論に深入りはしないが、ビデオの映像が示したのは中国船による意図的な当たり行為である。「巡視船みずきの追跡を免れるため、とっさにとった行為」などとして船長を釈放した那覇地検の言い分が虚偽だったことを、いかんなく示している。
 政権が検察に対し裏の指揮権を発動したかどうか、多くの国民が疑っているといってよい。指揮権を発動する立場にある法相が、日中関係を慮って苦渋の決断をしたというなら、まだ絵になる。ところが、よりによってのチャランポラン発言である。ことの重要性を把握せず、法相をかばうような態度に出たことで、政権は墓穴を掘った。今さら法相が辞任したところで、時計の針は元に戻らない。

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