中国が李登輝台湾総統の「最後の一撃」に神経をとがらせている。共産党中央の幹部の一人は「万が一、三月の総統選挙の直前に李が独立を宣言したら……」との懸念を漏らす。台湾民主化の総仕上げとして李総統が退任直前に独立を宣言するシナリオを警戒しているのだ。

 中国が悩んでいるのは「独立派である李総統が、表舞台から去った後もどれほどの影響力を有しうるのか」の一点に絞られている。江沢民指導部は、当面は「李総統を交渉相手とせず」の姿勢を貫いている。だが、後継者とも交渉できないとなれば、軍を中心とする強硬派は「祖国統一の大業の無期限延期」として黙っていないし、その時、江は「武力発動要求の声を押し止められないかもしれない」(党幹部)という。

 国際社会の一部では「引退後はキリスト教の伝道師になりたい」といった李総統の発言を真に受ける向きもあるが、当の台湾人民はこんな発言を信じていない。「中華民族独特の交渉スタイルは、相手の限界まで探り合い、限界の直前で一歩引くこと」とする先の幹部は、「中国と同じ中華民族である李総統の交渉術を、国際社会に自らの尺度で測られてはたまらない」とぼやいた。

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