東独消滅から十年経ってなお、その「埋蔵金」ともいうべき推定百億マルク(約六千億円)の秘密資金の行方は依然、謎に包まれたままだ。関係筋によれば、シュレーダー独政権は十月の東西統一十周年記念日を控え、この秘密資金の割り出しを急ピッチで進めているという。

 旧東独秘密資金は、国家保安省(シュタージ)直属の国営企業が、武器売却等で獲得した外貨を七〇年代から外国の銀行口座に大量に送金していたもので、シュタージ謀略工作の軍資金となっていた。うち約三億マルクはリヒテンシュタインのダミー会社を通じウィーンの匿名番号口座へ振り込まれたことが判明したが、これは全体のごく一部に過ぎない。

 情報筋によれば、この秘密資金は、地下に潜伏中のシュタージ残党の生活費となっているのは間違いない。ロシア情報機関が旧東独スパイを大量に雇い入れたこともわかっており、ロシアの対NATO謀略戦資金に流用された可能性もあるという。

 故ホーネッカー元東独国家評議会議長の「東独は滅びない」との遺言は、秘密資金のある限り、「世界最優秀の情報機関」と謳われたシュタージの情報網が容易に消失しないことを仄めかしたと受け止められている。

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