昨年三月に悲願の北大西洋条約機構(NATO)加盟を果たしたチェコ共和国。冷戦時代にはBISなど「泣く子も黙る」情報機関が国民生活の隅々まで監視、その背後ではKGBなど旧ソ連の情報機関がにらみを利かせ、一般市民を震え上がらせていた。

 そのチェコで、今度はロシアを筆頭とする旧ソ連諸国の情報機関の暗躍が目立っている。東欧外交筋によると、「東側」スパイが狙っているのはずばりNATOの軍事情報。加盟して日が浅いとはいえNATOの正式メンバーになったチェコは、NATO軍事情報を入手するのに「世界で最も容易な場所」(同筋)となったのだ。国内でも、共産党がNATOのユーゴスラビア空爆に反対して、ロシアやユーゴにNATOの情報を流そうとしているとの疑惑も持ち上がった。

 チェコでは昨年来、四つあった情報機関を二つに整理・統合するなど情報漏れを防ぐ作戦を展開しているが、チェコ上院のザントフスキー外交・国防・保安委員長は「東側情報機関は冷戦時代よりもチェコに深く浸透している」と警告、チェコの安全保障にとって最大の脅威になっていると発言している。

 

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