中国人民帝国万々歳!

執筆者:徳岡孝夫2000年1月号

 珠江の河口に生えた小さなキノコ。それがマカオである。摘もうと思えばいつでも摘めるのに、四百四十二年間もポルトガルのものだった。返還を喜ぶ北京の新聞は「長いこと親元を離れていた我が子が帰ってきたみたい」と書いたという。大航海時代の最後の遺産。アジアに残る欧州列強最後の植民地が、これで消えた。

 ギャンブルに関心ない私は、二度しか行ったことがない。最初は一九六七年の初夏、大陸から溢れ出した文化大革命の取材だった。

 時限爆弾が街頭で爆発したり、紅衛兵にやられたらしい手足を縛った死体が何体も珠江を流れて来たり、香港は殺伐たる空気に包まれていたが、マカオは静かだった。相手が遠いポルトガル政府では、紅衛兵も造反する張り合いがなかったらしい。壁新聞や毛沢東語録で、ちょっと革命ごっこをした程度だった。

 地元の新聞社に行って教えてもらった話をもとに、記事を書いて一丁あがり。心も軽くカメラマンを誘ってカジノに行った。文革騒ぎを嫌って観光客バッタリ、閑散とした賭場でサイコロの「大小」をやって少し儲け、ナイターのドッグレースで漫々走(ゆっくり走れ)と水雷艇という犬に注ぎ込んで全部スッた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。