東京電力

執筆者:本誌取材班2000年1月号

“公益の担い手”として、義務の対価である無競争、が許されてきた東京電力――。だが、自由化の波は既に足元を洗っている。注目の新規事業は未来の柱となり得るのか。「最初は歴代の東電社長と比べて線が細いかと思ったが、意外に攻めに強い人かもしれないね」。電力業界の有力OBのひとりは最近、表示電力の南直哉社長をこう評価している。昨年六月の就任以降、南社長が手を休める暇もなく打ち出した新規事業への進出を指しての話だ。 ソフトバンク、マイクロソフトと組んだ高速インターネット事業の「スピードネット」設立、さくら銀行の進めるインターネット銀行への出資、戸建て住宅分譲事業、住宅性能評価会社の設立、米独立系発電事業者(IPP)であるオライオンへの出資、子会社を通じた介護サービス事業――。東電は九九年後半、矢継ぎ早に新規事業や海外への進出を発表、世間の耳目を集めた。そのスピード感はソニー、富士通など日本の産業界の“勝ち組”と比べても遜色のないものだった。 焦りともとられかねない東電の多角化、新規事業進出の背景にあるのは、「今年三月に迫った大口電力の小売り自由化」と東電関係者は口を揃える。では、東電がそれほど警戒する電力小売り自由化とは何なのか。

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