「懲罰賠償制度」導入を真剣に検討すべし

執筆者:矢吹信2000年1月号

「リンゴのマークのファンも買いに来るのでは」――。昨年七月、ソーテック社が新型パソコン「e-one」の製品発表会を開いた際、出席した部品納入業者首脳はこんな冗談を飛ばして周囲を笑わせた。たしかにe-oneは、アップルコンピュータ社が起死回生の切り札として市場に投入した人気パソコン「iMac」によく似ている。納入業者のように笑って済ませるわけにはいかないアップルは、八月二十四日、「iMacのデザインが模倣された」として、e-oneの製造販売禁止を求める仮処分申請を東京地裁に提出した。 それから一月もたたない九月二十日、特許や著作権を専門に扱う東京地方裁判所民事第二十九部の飯村敏明裁判長は、アップルの申し立てを全面的に認める決定を下した。争点になった商品が人気のパソコンであったこと、また、スピード経営の時代に反した日本の裁判所の「のろさ」がクローズアップされていたこともあって、この決定は大きな話題を集めた。ソーテック裁判の画期性 この種の事件では、決定に至るまで早くて二カ月はかかるというのがこれまでの「裁判所タイム」の常識だった。それだけに、東京地裁の決定は「裁判所の変身」を印象付けたとも言えるが、実はこの決定で真に「画期的」だったのはスピードではない。読者には司法界特有の冗長な言いまわしを少し我慢して頂き、画期的だった個所を紹介させて貰うと、以下のようになる。

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