総統選後も鍵を握る李登輝

執筆者:早田健文2000年2月号

 選挙の行方を静観する中国は、この男の動向に神経を尖らせている。

[台北発]二月五日は台湾で最も大切な年中行事、春節(旧正月)だった。爆竹が鳴り響き、晴れやかな雰囲気の漂うこの時期こそと、各候補は休みなしに各地を駆け回った。台湾の総統選挙は三月十八日の投票に向けて残すところ一カ月。いよいよ終盤戦だ。

 五候補が出馬しているが、実際には与党国民党の連戦副総統、最大野党である民進党の陳水扁前台北市長、無所属の宋楚瑜前台湾省長の三候補による争いだ。各種世論調査によって差はあるが、二月初旬に三人の支持率は二〇%から二五%でほぼ横一線に並んだとみられる。この基礎票の上に、これから約三〇%の浮動票をどう取り込むかの勝負だ。当選ラインは得票率三五%から四〇%と予想される。

 李登輝総統の圧勝が確実だった前回九六年と異なり、今回の選挙が最後まで予断を許さないのは、三人の鼎立状態となっているからだ。一騎打ちなら誰も現職副総統の連戦氏には勝てない。しかし人気の高い宋楚瑜氏が李総統に反旗を翻し、国民党を割って出馬したことから、民進党の陳水扁氏にもチャンスが生まれた。

 三候補のうち、連戦候補は一九三六年生まれの本省人(戦前からの台湾住民とその子孫)だが、生まれは中国西安。行政院長(首相)を経て副総統となった李総統の後継者だ。実務経験が豊富で安定感があるが大衆性に欠けるため、人気はなかなか上昇しない。国民党長期政権の弊害である「黒金」(暴力と金権)がマイナスイメージとなって足を引っ張る。頼みは国民党を挙げた組織戦と行政部門の支援だ。

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