昨年秋、フランスの石油大手エルフ・アキテーヌが同業の大手トタルフィナに吸収合併されたが、この合併の背後には、エルフという「ブラックボックス」を早く葬りたかったフランス政界の意図が働いていたのではないか、との見方が浮上している。というのも、今年になってドイツのコール前首相の不正資金スキャンダルが発覚、エルフがフランス政府の代わりに対独裏工作を担っていた構図が明らかになったからだ。

 かつては国営企業だったエルフは伝統的にアフリカ諸国の支援窓口となるなど、長らく仏政府の利権確保の先兵となっていた。しかし、九〇年代前半のミッテラン政権末期には、台湾へのフリゲート艦売却の裏工作や、コール首相への選挙支援など、その活動はさらに生臭い領域へと拡がっていった。こうした活動の実際を担っていたのが、当時のルフロックプリジャン会長と、現在国際指名手配中で行方知れずのナンバー2、シルヴァン氏だった。

 フリゲート艦スキャンダルではすでにデュマ元外相が起訴されており、国際政治で主導権を握るため、国策企業を通じて裏工作を繰り返してきたフランス政治システムの病根を指摘する声も出ている。

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