台湾海峡危機は再燃せず

執筆者:藤村幹雄2000年3月号

「台湾白書」は波紋を広げたが、今回は「言葉の戦争」に終始する

[ワシントン発]「台湾が統一交渉を無期限に拒否するなら、武力行使も辞さず」。二月二十一日に中国政府は「台湾白書」を公表した。ワシントンでは九六年三月の台湾海峡危機再燃説が高まったが、今回は「言葉の戦争」に終始しそうだ。米太平洋軍のブレア司令官は、「中国、台湾、米国の軍事展開に変化はない。レトリックが軍事的実態を越えてひとり歩きしている」と指摘した。米側が三月十八日の台湾総統選に向け、先手を打った予防措置が効を奏したためだが、実は問題が先送りされたにすぎない。

「九六年に台湾海峡の中へ米太平洋艦隊を静かにかつ気付かれずに派遣するとのクリントン政権の決定には、私も関与した。それは外交と防衛の素早い力の誇示であり、中国、台湾の面子をつぶさなかった。台湾危機への米軍投入問題では、歴代共和、民主両政権は肯定も否定もしない不透明な対応を取り、それが効果をあげた。私が大統領になってもその路線を踏襲する」

 三月一日、ロサンゼルスでの米大統領選の民主党予備選テレビ討論会で、ゴア副大統領はこう述べてかつての空母投入の成果を強調した。しかしこの発言は、「私がインターネットを発明した」とする発言に続くゴア副大統領のミスリードになるかもしれない。

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