神奈川、新潟両県警に端を発し、国家公安委員会の持ち回り決定を含めた警察不祥事が、次期衆院選で小渕政権を直撃しかねないとの危機感が永田町に漂い始めた。保利耕輔国家公安委員長の進退というレベルにとどまらず、「自民党大敗―小渕恵三首相退陣」という可能性もささやかれている。

 政権危機の兆候はまず世論調査に出ている。自自公批判が依然として六割を超えるなか、内閣支持が再び内閣不支持を下回った。自民党支持率も低迷し、無党派層が増えている。自民党内には、現状を一九七九年衆院選で当時の大平正芳首相が増税と鉄建公団などの不正経理事件で思わぬ敗北を喫した状況と似ていると見る向きもある。

 小渕首相は、七月の沖縄サミット前までに監察に外部の目を入れるなど目に見える形で警察行政の見直しに結論を出したい考えで、内閣特別顧問となった中坊公平整理回収機構顧問、後藤田正晴元副総理・法相ら六名で構成する「警察組織刷新会議(仮称)」がその知恵袋だ。「真空総理」振りをまたも発揮した格好だが、今回に限っては有識者頼みの手法が求心力回復に成果を上げるかは不透明。

 というのも、実は中坊氏は竹下登元首相のお膝元である島根二区で錦織淳氏を推してきた人物。青木幹雄官房長官は「選挙のこととは関係ない」と言うが、小渕首相の後ろ盾である竹下氏の対抗馬を推す人物を自ら口説き落とす節操の無さに首をひねる議員もいた。後藤田氏もまた、「警察も悪いが、政府も公安委員会も悪い。世間の風潮に乗せられて警察庁長官を処分したが、保利の責任はどうなっているのか」と周囲に対し、政府批判を口にしているという。保利氏は後藤田氏のかつての参謀役、保利茂元幹事長の息子だけに怒りが募るのかもしれない。

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