警察庁

執筆者:生田忠秀2000年3月号

神奈川県警、新潟県警の一連の不祥事をきっかけに、日本の警察組織が大きく揺らいでいる。構造的腐敗の根幹にあるのは「キャリア制度」疲弊だ。警察再建の処方箋を考える。 神奈川県警の覚醒剤使用隠蔽事件で、犯人隠避罪などに問われた渡辺泉郎元県警本部長は、二月二十四日、横浜地裁での初公判の被告人質問でこう答えた。「臭い物にフタをするという習慣が身についていたと思う」 元警察庁長官のひとりはこれに対し「よくも言ったもんだねぇ」と嘆息をもらした。が、しかしその後、田中節夫警察庁長官の懲戒処分(減給一カ月)にまで発展した新潟県警をめぐる一連の不祥事で、警察組織全体が神奈川県警以上に悪質な病弊に冒されていることが露呈した。 しかも、警察庁を管理する立場の国家公安委員会の保利耕輔委員長(自治相)が、国会で不祥事をめぐる警察幹部の処分を決めた公安委の経緯について「虚偽」の答弁をしていたというとんでもない事実まで明らかになった。 日本が諸外国に比べて治安が良いのは、警察がしっかりしているからだ、とこれまで警察関係者は胸を張ってきた。その「ニッポン警察」を視察するために外国の警察関係者が訪れることも多い。シンガポールなどは日本に倣って「交番制度」を本格的に導入している。しかし、どうやら「ニッポン警察」が優秀だというのは根拠のない「神話」に過ぎなかったようである。わが国の治安が良かったのは、日本の社会がそれだけ安定していたからだと見る方が正しいのではないか。

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