35万台

執筆者:伊藤洋一2000年3月号

 アメリカ企業は明らかに変わりつつある。同国の戦後の歴史に例を見ない人手不足も一因だが、それ以上に吹き荒れる技術革新とそれに伴う企業の合従連衡の中で、米企業は従業員との間で新しい道を探り始めた。 証拠は「三十五万台」にみられる。フォード・モーター社が全世界の従業員に会社で使うコンピューターではなく「家で使うコンピューター」として提供する台数。同社の従業員総数三十五万人。トップから平社員まで、世界中フォード社員ならどこで働いていても、この計画の対象となる。しっかりしたシステム、月五ドルでインターネットも使い放題。三十億ドルの大プロジェクトだ。「アメリカ企業の歴史上例がない」(ワシントン・ポスト)措置だが、これに続く企業が次々に出てきた。インテル、デルタ航空、アメリカン航空。職場と家庭をどちらかと言えば厳密に分けてきたのがアメリカだ。しかし、コンピューターとそのネットワークについて言えば、その使用技術をどの程度全従業員が習得しているかがこれからの企業の盛衰を左右すると見て、こうした措置を打ち出してきたのである。 フォードは、従業員の家族一人一人に電子メールのアカウントを提供し、それぞれの家族が「インターネット上にホームページまで作れるようになることを期待する」としている。他社も同様。

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