三月二十六日のロシア大統領選は有力な対抗馬不在で、プーチン大統領代行の信任投票の様相がますます色濃くなってきた。政局の焦点はむしろ、“プーチン大統領”がどのような政策を打ち出し、国内の権力構造がどのように変化していくのかに移ってきている。

 旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身で国家主義者。半面、政策的には改革派寄りとされるプーチン代行だが、性格的にはシニカルであくまでも実利を優先する人物という評価が固まりつつある。プーチン代行は二月二十五日、大統領選に向けた選挙綱領ともいえる「有権者への公開書簡」を主要各紙に掲載した。「万人に平等な法の独裁」を通じて、国民に信頼される「強い国家」をつくることを信条に掲げているのが特徴だ。「犯罪者たちの要塞」と化したチェチェン共和国への軍事進攻も、法秩序の回復という理屈で正当化。エリツィン前政権下で政治的影響力を誇示したオリガルヒ(新興財閥)に対しても、今後は厳しい態度で臨むことを示唆している。

「公開書簡」は具体的内容に乏しいが、汚職や犯罪、政財界の癒着構造といったロシア社会の腐敗に断固として取り組む姿勢ははっきりしている。選挙綱領だけに国民向けアピールの意味合いもあるだろうが、それを割り引いても「強い大統領」として世直しの先頭に立つ意思は満々のようだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。