最悪の状態が続く「日印関係」

執筆者:馬場友美2000年4月号

インド外務省幹部の“怨念”に近い反日感情が根底に[ニューデリー発]クリントン米大統領は三月、米首脳として二十二年ぶりにインドを訪問、冷戦後の「米印新時代」の構築を高らかに表明した。最大の懸案である核拡散問題を巡っては、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名問題を含め具体的な成果はなかったが、今回の訪問で、巨大な潜在的市場を抱える世界最大の民主国家インドは、国際政治の主要なプレーヤーとして躍り出る重要な契機を得たのは疑いない。 実際には核保有五大国(P5)は現状の核不拡散条約(NPT)体制を維持する方向で結束しており、インドがP5並みの発言力を確保しつつ、その一角に割り込むのは容易ではない。ただ少なくとも、二十一世紀の国際情勢は冷戦後の米国一極支配の妥当性を検証する視点から、多極化への移行の可能性を探りつつ推移するのは不可避だろう。 そうであれば日本も、おのずから対印外交の比重を相対的に高める必要性に迫られるのは間違いない。 ところが、肝心の日印両政府の関係は、九八年五月のインド核実験以降、過去最悪の状態に陥り、いまだに本格的に回復してはいないのが現状だ。印政府は、「日本は、核兵器を保有せざるを得ないインドの安全保障環境を理解しない」と反発。しかも、印外務省のアジア政策を立案する幹部に“怨念”にも似た反日感情が定着してしまったことが、事態を一層深刻化させている。

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