スミソニアン協会

執筆者:木下玲子2000年4月号

年間3000万人もの観光客が訪れるワシントンの国立美術館・博物館。その使命とは何か。 米国の首都ワシントンを訪れる人なら、一度は足を運びたい観光スポットにスミソニアン協会の美術館や博物館を挙げるのではないだろうか。 米国会議事堂からリンカーン・メモリアルまでを直線で結ぶ一帯――インディペンデンス通りの北側からコンスティテューション通り南側までと、三番街から十四番街までの長方形に似た大空間――に、スミソニアン協会の美術館・博物館は整然と収まっている。 ここは通称「モール」と呼ばれ、市民に親しまれている。 美術館や博物館がそれぞれの個性を主張するのは、建物が伝える年代の異なった建築様式にとどまらない。展示内容や所蔵コレクションの多様さも訪れる人々を魅了する。 たとえば、フリーア美術館に展示されている中国の明時代の陶器に記された簡潔な説明文を堪能する。あるいは、国立航空宇宙博物館でライト兄弟が世界初の飛行に成功したとき乗っていた伝説的な「ライト・フライヤー号」の実物に触れて興奮を味わう。それから、国立アメリカ歴史博物館に展示されている、歴代の米大統領夫人が着用したローブデコルテを鑑賞する。 美術館・博物館を巡り複数の展示を見学するうちに、人々はスミソニアン協会が集合的に伝えようとしているメッセージを理解していく。米国立美術館・博物館としての使命をである。

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