なぜ、いま「首相公選制」か

執筆者:2000年5月号

「首相公選制」が、現実味を持った選択肢として浮上してきた。 古くは中曾根元首相が昭和20年代に提唱したが、およそ実現不可能として長らく議論の俎上に上ることはなかった。しかし、昨今の憲法改正論議の高まりとともに、さまざまなレベルで首相公選制が論じられるようになってきた。 昨年9月、同時期に行なわれた自民党と民主党のそれぞれの党首選で、自民党の山崎元政調会長と民主党の鳩山幹事長代理(現代表)が、首相公選制の導入を憲法改正の一つの柱として主張。今年1月に、小渕前首相の私的有識者懇談会「21世紀日本の構想」が提出した最終報告書には、中長期的な課題として首相公選制の是非の論議を始めるべきとの提言が記されていた。同月衆参両院に設置された憲法調査会でも、憲法9条問題と並んで、首相公選制の導入が主要テーマの一つに上っているという。 さらにここへきて、国民の間に首相公選制を求める気運が高まるような出来事が相次いでいることに着目すべきだろう。 まずは、3月に行なわれた台湾の総統選がある。民主化の歴史が決して長くはない台湾で、市民が直接、自分たちの政治的最高指導者を選び、しかも平和裏に政権交代を成し遂げた姿は、新鮮な衝撃を日本国民に与えた。同月末にはロシアでも大統領選が行なわれ、アメリカでは11月の本選へ向けて大統領選が熱気をおびている。「選挙の年」といわれる今年、なぜ日本では政治の最高リーダーを直接選ぶことが出来ないのかと、疑問を覚える国民が多いことだろう。

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