「あえて極論すれば、日本にはいま二種類の経営者群像しか存在しません。(中略)小手先のリストラで逃げ切ろうとする〈日常的権益系〉と、二十一世紀世界に適応し、新たな機会とビジネス・モデルを求める〈創造的破壊系〉、の二つです」(船橋洋一『創造的破壊系 日本発世界の経営者たち』朝日新聞社刊 一四〇〇円)

 アメリカを震源地に、またたく間に世界を覆いつつあるインターネット経済。本書は、そうした時代の大転換のただなかにいる経営者たちへのインタビューをもとに、「日本におけるインターネット新生事物のありかとあり方」に力強く迫る。

 対談相手は、松本大マネックス証券社長や三木谷浩史楽天社長といった産声を上げたばかりの企業トップにとどとまらず、既存大企業の伊藤雅俊イトーヨーカドーグループ名誉会長や出井伸之ソニー社長、あるいは日本病からの再生を目指すカルロス・ゴーン日産自動車COOなど十一人。彼らの発言からは、新たなビジネス・モデルを模索する、まさに“旬”の発想、企業社会における最先端の実相が伝わってくる。

 これらの対談を下敷きに、著者は本書第II部で、経済社会が迎えたパラダイム・シフトの「解題」を展開する。あくまでも現場を出発点に、その意味と相対化を図る視線は、まさに良質のジャーナリズムならではのもの。経営者たちは日本の何を破壊し、何を生み出そうとしているのか――。インターネット革命の本質を、歴史的視点や社会学的考察も巧みに交えながら浮き彫りにするその試みは、安易な合理化による「縮み志向」ではない、日本の真の変革に向けた提言ともなっている。

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