北朝鮮の狡猾な思惑を見極めよ

執筆者:落合秀光2000年5月号

韓国との南北首脳会談に乗り出した金正日総書記の真意

[ソウル発]「何と言っても民族が第一だ。助ける人間はわれわれしかいない。われわれが貯めていたものを南朝鮮同胞を助けるために使わなくて、どこに使うというのか」――。

 北朝鮮の平壌放送は南北首脳会談を約一カ月後に控えた五月十日、金正日総書記のこうした言葉を紹介しながら、一九八四年九月に韓国が水害に襲われた際に、北朝鮮がコメ七千五百トン、布五十万メートル、セメント十万トン、医薬品などを送ったことを強調した。当時の対南支援は民族的な見地に立った金正日総書記の「主導的で積極的な措置」の結果と報じた。十六年前の対南支援をこの時期にことさら取り上げた北朝鮮側の思惑は興味深い。

外勢を排除して南北で

 韓国と北朝鮮は四月十日、史上初の南北首脳会談を六月十二日から十四日に、平壌で開催することで合意したと電撃的に発表した。北朝鮮は昨年夏から、それまで米国一辺倒できた外交を全方位外交へと転換しつつあるが、今回の首脳会談開催合意は、韓国との関係改善を全方位外交の主軸に据えるという、対外戦略の大転換をも意味するものだ。
「なぜ、金正日総書記が首脳会談を受け入れたのか」――、現在、関係者の関心はこの一点に集中している。

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