自公保連立政権の枠組みの是非、森首相の指導者としての資質、景気対策か財政再建か――など、今回の総選挙では幾つかの争点が叫ばれているが、日本の安全保障や防衛の方向性といった問題については、全くといっていいほど議論が聞こえてこない。つくづく今の日本は内向き志向が強まっていることを痛感する。 だが、台湾の陳水扁政権の誕生、南北朝鮮半島首脳会談の実現でも明らかなように、日本を取り囲む国際環境は急速に変化している。もっと国際情勢にも目を凝らすべきだろう。 そこで注目したいのは、最近、アメリカの国防総省が、21世紀へ向けての軍事戦略に関して、さまざまな文書・報告書を発表しはじめたことである。「統合ビジョン2020」「アジア2025」と名付けられたもので、ワシントンポストや日本の新聞でも、一部内容が紹介されている。 これらの文書が指し示す基本戦略は、アメリカは今後も「全世界的規模の優位」を保とうという「唯一のスーパーパワー」路線である。そして、これまでヨーロッパ中心だった戦略をアジア中心にシフトすべきだと説かれ、その際、着目すべきアジアの地政学的変化の兆しとして、(1)中国の軍事的大国化、(2)インドの「潜在的な大国」としての浮上、(3)朝鮮半島統一の可能性――の三つが指摘されている。

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