フォード財団

執筆者:木下玲子2000年6月号

世界中の財団から「モデル」として尊敬を集める財団が実践する助成の哲学とは―― 柔らかな朝日が木々の間を抜け出て大理石の床に差し込むと、這うように広がってゆく。そこから吹き抜け部分を囲むガラス壁に反射しながら光は吸い込まれていった。 一階から十二階までの約五十メートルの高さそっくりそのままが吹き抜けになっている。吹き抜けの足元には誰でも自由に散策できる室内自然林が息づく。 巨大な温室だ。アカシア、モクレン、ユーカリの大木がうっそうと繁り、その隙間を九百本を超える灌木やつるが埋める。夜になると、一階と十一階の両方向からのスポット昭明が木々を包み込む。 ニューヨーク市内、国連本部ビルから西へ半ブロック行ったところに、フォード財団本部(www.fordfound.org)はある。 私のために用意された部屋の大ぶりな机の上に、一時間刻みのインタビュー・スケジュールと資料の束がきちんと揃えてある。資料を手にとってページを繰っていると、開け放したドアをノックする音がした。返事を待って、女性がひとりドアから顔を覗かせた。「スーザン・ベレスフォードです。フォード財団へようこそ。お目にかかるのを楽しみにしていました」

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