新しい冒険の「ほんの始まり」

執筆者:梅田望夫2000年6月号

 前号で簡単に触れたように、四月末に「パシフィカ・ネオベンチャーズ」(www.pacificavc.com)という名のベンチャーキャピタルをシリコンバレーに設立し、七月から本格的な投資活動をスタートすることになった。 私が思いがけずこんな新しい挑戦に立ち向かうことになったいきさつを、今回から綴っていこうと思う。事の起こりは昨年の夏のことだった。「今週貴地に参ります。ベンチャーを起こした若者と八月十三日に会うことはできないでしょうか。新しい流れを実際に体感してみたいのです」 東京の岡本行夫さんから届いたこのメールがすべての始まりであった。 私が岡本さんとサンフランシスコで初めて会ったのが七月二十三日。このメールが届いたのが八月八日。そしてその五日後の十三日、岡本さんと私は、パロアルトに借りた会議室で、私の友人が推薦してくれたインド人の若者たち三人と向かい合っていた。 リーダー格の若者の名はロハン・マハデバン(二十九歳)。インドの高校を出た後米国に留学、ハーバード大学で宇宙物理学の博士号を取得した後、英ケンブリッジ大学で研究を続けていた。一年前に、学問の世界からシリコンバレーに挑戦の場を移すことを決意。以来、ありとあらゆるインターネット事業の可能性を仲間二人と研究し、「今やるならこれしかない」というサービス事業を構想したのだという。

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