デジタル・デバイド時代の戦略を描け

執筆者:伊藤洋一2000年6月号

デジタル・デバイド対策を、単なる弱者救済ととらえてはならない。それは企業・国家の「競争力」の問題でもある。必要なのは日本の指導者たちの意識改革だ。 今年七月と間近に迫った「九州・沖縄サミット」での中心議題は、IT(情報技術)革命である。中でも「デジタル・デバイド」(digital divide)が最重要議題の一つとなる。ITに詳しいとはとても思えない日本の首相の司会でどのような展開になるか心配だが、この問題は「弱者救済」以上に、個人にとっては「経済活動への参加」、企業にとっては「競争力の維持」、国民経済や世界経済にとっては「均衡ある発展」という観点から見る必要がある。「豊かにする力」が生む格差 改めて説明する必要もなかろう。デジタル・デバイドとは、一般的には「情報・通信技術の急速な発展が産業や社会に大きな変革をもたらして生活を豊かにする力を示し始めている。その一方、技術発展についていけない途上国や先進国内の貧困層や高齢者が不利な立場に置かれて、新技術を使いこなす富裕層との経済格差が広がる」ことを指す。端的に言えば、「情報格差」ということである。 今回のサミットで日本は、途上国の抱えるデジタル・デバイド問題の是正に向けて、(1)政策・制度づくり(2)研修や教育の充実(3)情報通信基盤の整備(4)開発援助を通したIT利用の促進――などを議長国として提案する予定である。ここでの図式は、デジタル・デバイドに悩む途上国を先進国が助ける、というもの。国レベルで見て情報技術の取り組みに大きな格差があり、これが世界経済において国と国の間の格差を広げていることは事実だ。諸国間の格差拡大は、紛争や不必要な人口移動の原因になるから、「均衡ある世界経済の発展」のためにもサミットでの取り組みは必要だろう。

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