シリアで親子による政権の世襲が成立したことで、リビアのカダフィ大佐やエジプトのムバラク大統領も将来、息子に委譲するのではないかとの観測が広がっている。国内をほぼ掌握しているリビアの世襲は実現の可能性が高い。しかし、ムバラク大統領の場合、現在ビジネスに専念している二人の息子の一人を後継に据えることは反乱さえ招きかねない特殊な事情がある。 ムバラク大統領は六月十三日のアサド大統領葬儀に列席したが、「やがて来る決断の時を想像すると、内心穏やかではなかったはず」(中東外交筋)と分析されている。ムバラク政権にとって爆弾になりかねないのはアラブの英雄ナセルの息子の存在だ。ムバラク大統領はこのナセルの息子の人気が絶大なのを恐れて、冷遇に冷遇を重ね、息子は一時期、欧州に逃れていた時期もあったほどだ。エジプトの週刊誌「アルオスブ」は「ナセルの死後、息子は継がなかった」と報じ、ムバラク大統領の世襲に釘をさしている。ムバラク大統領の息子たちは父親の特権をカサにきて、ビジネスの世界で暴利をむさぼっているという。国民の反感を買っていることもあって、同大統領は世襲を口には決して出せないのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。