運輸省の鉄道事故調査検討会がまとめた営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故についての中間報告から、鉄道の安全神話に対する思わぬ盲点が浮かび上がった。日比谷線事故の原因は、個別には脱線に至らない要因が、同時に複数作用したことで発生した「複合脱線」との推定が固まっている。その一方、原因調査の過程で、驚くべきデータが得られたという。同検討会の最高幹部は、「低速走行時の基礎研究、実験が欠けていた」と苦渋の表情で語る。 新幹線など高速鉄道の安全対策のための基礎研究、実験は世界トップクラスだが、低速走行時の基礎研究は注目されておらず、安全対策に対する基礎的なデータが不足しているのが現状だ。専門家は「日比谷線の事故は、時速十数キロという低速走行時に発生しており、高速走行時の安全対策を追求した車両、保守管理システムでは、機能しないケースがあることが判明した」と指摘する。 低速走行、急カーブの連続などの日比谷線事故の条件は、地下鉄などの大都市鉄道網に共通しており、抜本的な安全対策の見直しが急務だ。同検討会幹部は、「低速走行に適した専用車両の開発などに早急に取り組む必要がある」と指摘している。

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