エンジェルとしての二つの原則

執筆者:梅田望夫2000年7月号

 シリコンバレーでエンジェルになる決心(前号参照)をした岡本行夫さんと私が最初にしたことは、次の二つの原則をきちっと確認することだった。 第一の原則は、「投資するといっても口ばっかりで、情報を入手した挙げ句に、先方には全く理解不能な理由で投資を中止する」という日本企業や日本人にありがちな「最悪パターン」には絶対に陥らないようにしようということだった。 第二の原則は、そうはいっても投資対象ベンチャーとはきちんと交渉を行ない「シリコンバレーの常識」から見ても真っ当な条件で投資を行なうこと、そのプロセスで交渉が決裂すれば当然の事ながら投資は中止するという強い意志を持つということだった。 この二つの原則はしごく当然と思われるだろうが「言うは易く行なうは難し」の典型で、日本企業がシリコンバレーで不評なのはこの二つの原則を全うするのが難しいことに起因している。 シリコンバレーで誰も投資しないような無謀な条件で投資すれば馬鹿にされるだけだし、一方投資しないという意思決定に至るプロセスが不透明で理不尽であれば、もう誰からも相手にされなくなってしまう。シリコンバレーには、ベンチャー投資のメッカなりの「ジャングルの掟」が厳然と存在しているのである。

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