「ペイオフ延期論というものの本当の根源を突き詰めると、政府不信論に突き当たる。こいつは本当に深刻な問題だ。いくら政府が大丈夫だと連呼しても信用できないと国民は心の奥で考えてしまっているのかもしれない。そういう意味で、このペイオフ問題は、日本政府自体が問われているのさ」(木村剛『通貨が堕落するとき』講談社刊 一八〇〇円) フィクションと呼ぶにはあまりにも現実的な経済小説である。 物語は一九九七年十月、倒産寸前の「大洋証券」に対する資金提供を「北嶋證券」に求める大蔵官僚の電話から始まる。しかし、当局の恫喝にも民間は動かず、大洋証券はインターバンク市場でデフォルトを起こす。そして長い長い金融危機のドラマが幕を開ける。 金融機関の連鎖倒産から金融機関に対する公的資金の積み増し、破綻銀行の公的管理と蔓延するモラルハザード、度重なるペイオフ延期、さらには日銀による国債の直接引き受けからハイパーインフレへと、物語はまるで現実をなぞるかのごとく進行していく。 感心させられたのは「瑕疵担保責任」に潜むドラマ性を見事に描きだした点。本書では破綻した「東京国際銀行」を買い取った米国の投資グループ「ウィンドフォール社」が、譲渡後三年以内に二割以上価値が目減りした債権は預金保険機構が買い取ってくれるという規定(瑕疵担保責任)を利用して、さまざまな仕掛けをする。それがいかにおいしい商売であるかが書いてあるのだが、本書が書かれたのは旧長銀のそごう向け債権を預金保険機構が買い取る前……。

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