アメリカが推進しようとしているNMD(米本土ミサイル防衛)構想に対し、反対の大合唱が国際的に巻き起こっている。今後しばらくの間、NMDを巡る対立・摩擦が、国際政治上の最大の問題であり続けるのは間違いないだろう。 NMDの対象国というべきロシア、中国、北朝鮮が共同して反対の声を上げるのは当然としても、NATO(北大西洋条約機構)の同盟国たるフランスやドイツもNMD配備に懸念を表明。国連のアナン事務総長も公式に批判した。さらに、これまで安全保障に関しては常にアメリカと歩調を合わせてきたイギリスでも、議会下院の外交委員会がNMDに反対する報告書を政府に提出するという動きが起こっている。主要国で沈黙を守っているのは日本ぐらいだ。 各国の思惑は微妙に異なるが、反対の一致した理由は、すでに大量の核兵器という「矛」(核抑止力)を持つにもかかわらず、さらにミサイルを迎撃する強力な「盾」をアメリカが備えれば、核兵器による「恐怖の均衡」という現在の軍事バランスが崩れ、再び軍拡競争を促しかねないという点に尽きる。 これに対し、コーエン国防長官は、秋の大統領選に配慮して、NMDの正式配備の決断を次期政権に委ねるとの考えを明らかにしている。だが、先の共和党大会で大統領候補に指名されたブッシュ・テキサス州知事は、受諾演説の中で「可能な限り早い時期にNMDを配備する」と宣言。選挙情勢からみて、民主党候補のゴア副大統領がNMD反対を唱えるとは考えられない。しかも、副大統領候補のリーバーマン上院議員は積極的NMD支持派として知られている。

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