台湾の李登輝前総統が切望する十月末の訪日計画を、自民党と外務省が水面下でつぶしにかかっている。 国民党主席を辞任し、「私人」となった李登輝氏は、中嶋嶺雄東京外国語大学学長らが主宰し、十月三十日から長野県松本市で開かれる「アジア・オープン・フォーラム」への出席を強く希望しているが、中国側は「訪日すれば、日中関係に重大な打撃を与える」と警告。外務省は中国の意向を汲み、ビザ申請があっても却下する方針とされる。十月中旬に朱鎔基首相の訪日があり、タイミングが悪いとの判断だ。 李氏の訪日に強硬に反対しているのが、野中広務自民党幹事長とされる。野中氏は故竹下登元首相の対中利権を引き継いだとの噂があり、このところ、江沢民国家主席の懐刀とされる上海派閥の曾慶紅中国共産党組織部長との関係を強化、親中国志向を強めている。 英政府は六月末、ロンドン留学中の孫娘に会う李登輝氏にビザを発給、中国側の反発を退けたが、日本政府の対中追随外交は変わらない。元青嵐会メンバーで、台湾派だった森喜朗首相も、日中関係に波風を立てたくない立場で、この問題では野中氏が主権を握りそうだ。

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