石油元売り大手の出光興産が、出光昭社長(六八)派と出光昭介会長(七三)派に分裂、派閥抗争に突入している模様だ。発端は同社の株式上場問題。今年五月、出光昭社長が、これまで否定し続けてきた外部資本の受け入れを表明、「数年後には上場も検討する」とぶち上げたのに対し、出光昭介会長が真っ向から反対。上場推進派の社長陣営と反対派の会長グループに分かれての内紛劇に発展している。 上場を強く主張し社長派の急先鋒となっているのは、今年専務に昇格した天坊昭彦氏(六〇)。主に経理・財務畑を中心に歩み数字に明るいうえ、出光ヨーロッパ社長を務めるなど開明派として知られる。六月からは経理営業担当に回ったことで「得意先へのお披露目、次期社長は当確」と目されていた。 そもそも増資・上場の青写真は、天坊氏が経理時代にメーンバンクの住友、東海銀行の意向を受け長年をかけて周到に準備したもの。増資・上場というウルトラCで出光改革にメドを付けたうえで営業をこなし、来春にも高齢の出光昭社長とバトンタッチという筋書きだった。 ところが土壇場に来ての昭介会長の反対。七月段階ですでに三百五十億円の増資が完了しているにもかかわらず、「増資・上場は銀行に煽られた経理・財務が暴走している」と、天坊氏を念頭に置いた発言を繰り返している。もともと、昭介会長は天坊氏と同時期に副社長に昇格した名原武氏(六三)を推してきた。今回の役員人事は社長、会長の思惑の折衷案。にもかかわらず、増資・上場を契機に昭社長、天坊専務陣営が社内で影響力を持ち、「ストレスがたまっている」との証言もある。

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