統一後のブームまで名実ともに「欧州経済の機関車」だったドイツが、成長率で欧州連合(EU)平均を下回る「お荷物」に成り下がって久しい。しかし、昨年夏からのユーロ安を追い風に受けた輸出主導の景気回復に加え、一向に手がつけられなかった税、福祉の高負担にメスが入り始め、立ち直りの兆しが見え始めた。特に、ハンス・アイヒェル蔵相(五八)が七月に成立させた税制改革は、コール政権以来五年越しという時間がかかったものの、「戦後最大」が単に売り文句で終わらないだけの内容を伴っている。 二〇〇一―〇五年実施の改革は、低所得者にももちろん減税の恩恵はあるものの、負担軽減の中心はずばり言って企業、それも保険、銀行などの大企業と高額所得者だ。ドイツの法人税は現在実効ベースで五〇%超と、世界では日本と並ぶ高水準だが、来年からは三八%に引き下げられ、「欧州内でも平均よりやや下」(独大蔵省)のレベルとなる。 さらに、企業の持ち株売却が二〇〇二年から非課税となり、「手放したいが税負担が大きすぎて売れなかった」(ドイツ銀行のブロイアー頭取)保険、銀行の持ち合い株式保有は、解消が進むことが必至だ。安定株主が消えて、企業は株主利益優先の経営で株価維持を図る必要に迫られる上に、含み益をそのまま手にすることができる保険、銀行業界は、この資金で合併・買収(M&A)に突き進むことが可能だ。九〇年代後半から進んでいる「ドイツ株式会社の解体・再編」が税制からも促進されることになる。

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