十月に発足するKDDIの初代社長に、奥山雄材氏が就任する。京セラの稲盛和夫名誉会長が創業したDDIの社長から格上げされる形。KDDIは連結売上高が三兆円強で、NTTグループの約三分の一。ガリバーとの差は依然大きいが、KDDIが対抗勢力一番手だ。「典型的な根回しの人」と評されてきた奥山氏の経営手腕に注目が集まっている。 郵政事務次官を務めた奥山氏は一九九三年十二月、KDD以外の通信事業者では初めての「天下り」社長としてDDIトップに就いた。稲盛氏が「人柄、手腕に魅力を感じた」というのが表向きの理由だが、奥山氏はNTT民営化のまとめ役を果たした政策通。PHSなど当時の新規事業をスムーズに展開するための“パイプ役”が期待されたという側面も否定できない。 DDIの社長業としては、京セラからの出向組とNTTからの転出組の間の舵取りが、大きな課題だった。その役目を終えて九八年に会長に退いたが、後任の日沖昭社長が体調を崩したことに伴い、昨年八月に社長復帰。DDI、IDO、KDDという三社の合併会社トップに就任するわけだ。 企業文化が違う三社合併には軋みがつきもの。「いまどき官僚がトップに天下りするのは派閥のバランスを取る必要がある場合だけ」(郵政省幹部)との声もあるように、寄り合い所帯の行司役という立場はかつてと同じ。合併で五十三人にも膨らむ役員の削減で「引導」を渡す役目も果たさなくてはならず、今回も裏方の印象は拭えない。

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