ご都合主義のプーチン「新興財閥対策」

執筆者:桜井薫2000年8月号

ベレゾフスキー氏は失墜し、アブラモビッチ氏が急浮上[モスクワ発]七月二十八日、クレムリンでプーチン大統領と財界有力者による初の円卓会議が開かれた。参加したのは天然ガス独占企業体「ガスプロム」のビャヒレフ社長、石油最大手「ルークオイル」のアレクペロフ社長らロシアを代表する二十一人の有力ビジネスマン。政権と財界との間の疑心暗鬼を解消するのが狙いだったが、大統領は辛辣な口調で会議を幕開けした。「今の国内の政治機構はあなたたちが組織したようなものだ。治安機関もオリガルヒ(財閥)たちの作ったモデルに従って活動しているだけだ」――。 この日の円卓会議を仲介したのは急進改革派「右派勢力同盟」を率いるネムツォフ議員(元第一副首相)。国内では政権に批判的なメディア・グループ「メディア・モスト」のグシンスキー代表が拘束されたり、新興財閥「インターロス」(代表はポターニン元第一副首相)が過去にニッケル最大手「ノリリスク・ニッケル」の民営化株を不当に安い価格で取得したとして検察が捜査に乗り出すといった事態が相次ぎ、政権の不可解な対応をめぐる財界の不安は一気に募っていた。みかねたネムツォフ議員が大統領に円卓会議の開催を求め、ようやく実現したわけだ。

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