日本経済のモラトリアムは終わった

執筆者:小暮史章2000年8月号

ゼロ金利政策が解除された。長期金利上昇からの緊急避難だったとはいえ、ゼロ金利は日本経済に資産効果というバネをもたらした。だが、今後政治と財政が規律を回復しなければ、待っているのはかつての英国同様の日本病という「悪魔のシナリオ」である。 勝負は宮沢喜一蔵相が予定通り軽井沢へ避暑に出かけた段階で、ついていたのかも知れない。人一倍、自尊心の強い宮沢蔵相は、執務室でゼロ金利政策解除の報を耳にすることだけは、我慢ならなかったのだろう。それにしても、速水優日銀総裁の老いの一徹は、思いもよらぬ芯の強さを秘めていた。 八月十一日の日銀政策決定会合は二つの重要な決定を下した。一つはゼロ金利政策の解除であり、もう一つは政府による議決延期請求の否決である。議決延期請求を提示したのは、政策決定会合に代表を派遣している大蔵省と経済企画庁だった。どちらか片方でなく、共同提出としたのは、政府がゼロ金利解除に強く反対したことを明示しておこうというものだ。 日銀は独立性確保と経済政策の整合性の間で、難しい綱渡りを強いられた。ゼロ金利解除決定後に、堺屋太一経済企画庁長官は異例の談話を発表した。「今後とも豊富で、かつ状況に応じて弾力的な資金供給を行うなど、引き続き景気回復に寄与するような金融政策がとられることを期待している」。釘を刺すとはこのことだろう。

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