北朝鮮を「内部改革」に誘導せよ

執筆者:落合秀光2000年8月号

派手な全方位外交に目を奪われるな[ソウル発]朝鮮半島を中心とした東アジア情勢は六月の南北首脳会談以降、北朝鮮の全方位外交の展開に日米中ロの関係各国の思惑が微妙に絡む形で、大きなうねりを見せている。 朝鮮半島の歴史を振り返れば、今回の首脳会談での南北共同宣言は南北間の三回目の大きな合意となる。第一回目は一九七二年の七・四共同声明、第二回目は九二年の南北基本合意書である。しかし、今回の南北共同宣言はこれらと大きく異なる。前二者の合意はニクソン訪中や社会主義圏の崩壊という国際情勢の激変が南北の当事者に合意を迫ったものだが、今回の会談は南北自身の判断により実現し、南北の合意が逆に国際情勢や関係国の対東アジア政策に大きな影響を与えている。 南北首脳会談の余波は東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の場にも波及した。南北首脳会談の成功を受ける形で、違和感なく史上初の米朝、日朝、南北外相会談などが実現してしまった。南北首脳会談の成功は、昨日までは「テロ国家」「不良国家」であった北朝鮮の外相と会談することが、あたかも「時代の流れ」であるような雰囲気を作り出し、史上初の外相会談が何の抵抗もなく実現されたのだった。各国は外相会談を受け入れることで北朝鮮という国家を事実上、認めたと言ってよい。

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