三菱自動車に「一発逆転」なし

執筆者:加納修2000年9月号

残された道は、ダイムラーへの吸収か、事業の分割・解体か 運輸省にかかった一本の内部告発の電話から始まった三菱自動車工業の大量のリコール隠し事件は、ついに刑事告発と社長の引責辞任という、企業にとっては最悪の事態で一応の決着を見た。しかし、事件で明らかになった問題点は早々に解決するものではなく、今後の企業運営に大きな影を落とすのは間違いない。「クリーンでオープンな企業」を目指してきた河添克彦社長は、その思いとは裏腹に「自浄機能に欠けた閉鎖的な企業」イメージをアピールしてしまった。ダイムラークライスラーなど海外メーカーとの提携で再建に向けて一気に加速するかに見えた三菱自動車は今、再びエンジンストップの危機に瀕している。 経緯を簡単におさらいしてみよう。 告発は、三菱自動車の品質保証部内のロッカーに、本来は運輸省に報告が義務付けられているユーザーからの苦情書類が大量に隠されていることを告げた。「……を曲がって……を入って」など、詳細を極めた告発に沿って、特別監査を実施したところ、その言葉通りに、隠蔽書類が「山と発見された」(運輸省職員)。問題なのは、隠されていたのが苦情処理の書類だけでなく、本来はリコール(無料で回収・修理)すべき内容のものまで含まれていたことや、一部はすでに三菱自身の手で、密かに回収・修理されていたことだった。

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