原子力潜水艦クルスクの沈没事故で内外世論の矢面に立たされたプーチン・ロシア大統領がこの事故を逆手にとって有力政商らの追い落とし作戦を図ったが、不発に終わったようだ。 八月の原潜事故発生後、ロシア新興財閥の総帥、ベレゾフスキー前下院議員らは大統領の事故対応の不手際を糾弾する一方、乗組員の遺族を支援するため百万ドル以上の“義援金”を集めたと発表したが、モスクワの消息筋によれば、大統領側近の元にはこの“義援金”が市民から集めたものではなく、新たな脱税行為によるものとの情報が寄せられた。 大統領が「今回の不幸を不誠実な形で利用しようとしている」などと述べ、ベレゾフスキー氏らの行動を激しく非難したのは、脱税摘発の自信があったからといわれる。 大統領は政商追い落とし作戦を展開する好機ととらえ、税務、検察当局を動員したが、政商側のガードが固く結局、脱税摘発には至らなかった。政府が要求していたロシア公共テレビ(ORT)の株式について、ベレゾフスキー氏が最近、他の民間企業への売却方針を表明したのは「大統領との暗闘での一種の勝利宣言」(消息筋)だという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。