注目の長野県知事選で、作家の田中康夫氏が前副知事の池田典隆氏を大差で破って当選した。石原都知事に次ぐ「作家知事」の誕生だが、長野の場合は「官対経済界」の抜き差しならない対決の構図となったことが特徴的だ。 知事選は、五期二十年の長期政権、自治官僚上がりの吉村午良知事が今春、引退を表明、同時に長年、吉村知事に仕えて後継が約束されていた池田氏が、県庁や県議はもちろん県下全市町村をまとめあげ、「大政翼賛会」とまで評される無風選挙の様相だった。 ところが、県内トップバンクで県指定金融機関でもある八十二銀行の茅野實頭取が地元紙に「無風ではなく有力候補が論戦する形を望みたい。知事選には民間から対抗馬を」と発言し波紋を呼ぶ。「頭取は元々、非常にリベラル。民間からという発言も突然出たわけでなく、公共事業に依存する官僚政治への疑問が根底にある。その意味では確信犯だった。ただ、表向き、当行は政治不介入というのが不文律だから、頭取の発言としてふさわしくないという意見も当然多かった」(同行幹部)。 頭取発言の背景にあったのは長野五輪後の経済停滞だ。たとえば、今年一―九月の倒産件数は平成最多だった昨年(二百四十件)を上回るペース(帝国データバンク調べ)。公共事業に依存する限り自立的な経済活性は望めない。

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