北朝鮮と米国の関係改善が進もうとしているが、その一方で日米などの関係各国の治安当局は、北朝鮮の麻薬問題に重大な関心を寄せている。日本の治安当局によると、北朝鮮は九〇年代半ばから、覚醒剤「メスアンフェタミン」の生産を本格化。中国、ロシアを通じて、日本、欧州、米国に密輸しているという。 麻薬密輸は、武器輸出や偽ドル紙幣などと並ぶ北朝鮮の外貨獲得の主軸となっており、金正日総書記直轄の「労働党三十九号室」と呼ばれる外貨管理の専門部署が統括しているとされる。一方、米国では「対外援助法」で大統領が「麻薬生産国」と指定すれば、制裁を科すことができるシステムになっているが、前出の治安当局は「米国が将来、『テロ支援国家』カードに代えて『麻薬カード』を、対北交渉の切り札として使う可能性が高い」と指摘する。 米国内では、北朝鮮製の覚醒剤の流入は、中南米の麻薬に匹敵する深刻な問題になっており、看過できない状況にある。米国が、麻薬カードを切れば、北朝鮮にとっては外貨獲得の糧道を断たれることになり、死活問題に陥るのは必至だ。治安当局は、「朝鮮半島情勢が一気に緊迫化する可能性もある」と警告する。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。