「政治力強化」に走るOPEC

執筆者:山田剛2000年10月号

足並みの乱れを抱えつつも「欧米と対等」というスタンスを明確化[カラカス発]「原油一バレルの価格に比べると牛乳は五・七倍、シャンプーは七十八倍だ――」。九月末にカラカスで開いた二十五年ぶりの石油輸出国機構(OPEC)首脳会議で、主催国ベネズエラのチャベス大統領はおなじみの派手なジェスチャーで原油価格が不当に安いとの持論を展開した。返す刀でチャベス氏は欧米各国の高額な燃料税を批判、原油価格高騰でOPECに一方的な増産圧力をかけ続ける先進国に強く反論し、今後OPECが生産や価格政策を巡り先進国と対等な対話を要求することを宣言した。いささか強引な主張ではあったものの、大統領は出席した各産油国の首脳・高官から一様に拍手喝采を浴びた。 石油価格が十年ぶりの高値となり、OPECが先進国による批判の矢面に立たされた九月。一部産油国の政府系紙は「先進国は自分たちのクルマや電気製品を輸出する際、買い手にいちいち相談するのか」などと反発。米国の増産圧力に抵抗して一時カルテルを離脱していたイランのザンガネ石油相も「先進国は石油価格が下がれば“市場原理だ”と言うくせにひとたび上昇すれば干渉してくる」と不満を示した。折しも同月下旬、世界銀行・国際通貨基金(IMF)が年次総会を開いたプラハでは途上国の債務削減を要求する非政府組織(NGO)などによる激しいデモが起きていた。チャベス演説は欧米主導の世界経済秩序に対して途上国の間で長年くすぶっていた不満を見事にすくい上げ、代弁したものだった。

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