大統領選挙を左右する米ユダヤ系市民の影響力

執筆者:浅井信雄2000年10月号

 二〇〇〇年十一月のアメリカ大統領選挙は、在米ユダヤ系市民の歴史に残るはずだ。副大統領候補に初めて、ユダヤ系のジョゼフ・リーバーマン氏(民主党)が選ばれたからである。 ニューヨークで出版された「アメリカのユダヤ人・一六二一年以降」には、ユダヤ系ピアニストのルービンシュタインの初渡米(一九〇六年)や、元国務長官キッシンジャーによるユダヤ系初のノーベル平和賞受賞(一九七三年)まで記録されているから、リーバーマン氏の名はさらに特記されるに違いない。 もしも民主党のゴア大統領が実現して、任期中に不慮の職務遂行不能に陥れば、リーバーマン副大統領が大統領に昇格する。大統領就任宣誓で、熱心な正統派ユダヤ教徒の彼が、バイブルに手を添えるキリスト教徒と違う、どんな儀式を見せるかも、早くも話題の焦点である。少なくともユダヤ系が大統領職に最接近した前例となる。 在米ユダヤ系市民は、アメリカの少数民族として、多くの差別的迫害を受けてきた。映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は、貧しいユダヤ移民が暴力団を組織し、政界に影響力を伸ばす物語だ。憲法は公務員の資格を信仰によって差別しないとしているものの、現実には欧州と違う形の差別をユダヤ人は受け続けた。

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