「和平の枠組み」は崩れない中東交渉

執筆者:立山良司2000年10月号

イスラエル・パレスチナ交渉は、紆余曲折はあったものの、相互否定の歴史から相互承認へと進んできた。最大の山場を迎え、衝突事件も頻発しているが、「和平」へ向かう流れ自体は変わりそうにない。 E. H. カーはその著『危機の二十年』で「強制と良心、敵意と善意、自己主張と自己抑制などはあらゆる政治的な社会に存在している。国家とはこうした人間の本性に由来する相反する側面からなっている」と述べている。中東和平交渉を見ていると、紛争解決のプロセスもまた、人間や政治が持っている相反する二面性に規定されていることがわかる。 イスラエル・パレスチナ交渉は今、最大の山場を迎えている。エルサレムの帰属や領土の分割、パレスチナ難民問題などの背後には、過去から現在に至るまでの歴史的な経緯や民族や宗教的な心情、相互の猜疑心が堆く積まれている。それだけに、イスラエルとパレスチナ国家との共存が模索される一方で、九月末から十月にかけてイスラエルとパレスチナ人とが激しく衝突し、紛争解決の枠組みを根底から揺さぶった。 以下では中東和平交渉の現在がどこに位置しているかを長期的な視点から再構築するとともに、今後のあり得べきシナリオや中東域内政治との関係などを検討してみよう。

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