インドネシアで反米感情が高まっている。十月下旬にはジャワ島の古都ソロで軍服をまとったイスラム急進派と称する若者約百人が、市内のホテルに押しかけ、米国大使をはじめ、全米国人がインドネシアから退去することを要求し、実行されない場合の報復を警告する文書を残して去るという出来事があった。ジャカルタの米国大使館前では、反米デモが頻繁に行なわれており、大使館は「確実にテロの危険性が迫っている」と、十月末には大使館を一時閉鎖し、厳重な警戒体制を敷いた。 だが一方で、政治的に利用するために反米感情を煽る人物の存在も指摘されている。その筆頭が「ワヒド降ろし」の旗振り役であるアミン・ライス国民協議会議長。ワヒド大統領の穏健なイスラム主義とは一線を画し、イスラム急進派としての自らの立場を強調するうえで「反米」は格好の材料というわけだ。また改革(レフォルマシ)や経済の立て直しに向け筋道をつけることに失敗した政治家たちが、自らの失点から目をそらすために反米運動を利用しているとの見方もある。マレーシアなどでも反米感情が高まっており、米国の新大統領は東南アジアにさらに神経を使う必要がありそうだ。

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